皆さん、お元気ですか。このところ、ネパールの報告が続き辟易した方もおられると思いますが、これは私の生き甲斐だった事業でもありご容赦願いたいと思っております。前節の最後に載せた漢詩ですが原題は「送元二使安西」と言って、王維なる唐の詩人が、西域の果て陽関と言う砦に、防人として赴任する元二なる人物を謂城なる街まで送った時の詩と言われております。原文は以下の通りです。【一部現代漢字に変換してあります】
謂城朝雨潤軽塵
客舎青青柳色新
勘君更尽一杯酒
西出陽関無故人
和訳すれば「謂城に降った朝の雨は塵やほこりを洗い流し、宿の柳も青々と蘇っている。さあもう一杯飲もう、西の外れ陽関を出れば知っている人はいないのだから」との意味で、送別の折に謳われる詩との事です。敦煌への旅のついでに陽関まで足を延ばそうと企みましたが成功しませんでした。この詩は何となく好きな文面で、頭の隅に残っておりました。そして、今回のツアーを、最後のネパール旅行と決めていたため、記念として記載させていただきました。などと唐の時代の「七言絶句」を切り口に今回も毛利のアドレス帳に載っている方々へBCCにて配信しております。メーリングリスト該当者は外したつもりでしたが、混入しておりましたらご容赦ください。
米国のトランプが原子力空母団を引き連れてベネズエラに向かい、ベネズエラは驚いてトランプとの交渉に乗るとの事です。あの男は、相手が弱いとなると居丈高に脅しをかけ、言う事を聞かぬと制裁だぞと脅しますね。何でも、原因は彼の国から密輸されるコカインとの事です。コカインとは南米や東南アジアなどに育つコカインノキと呼ばれる木の葉に含まれるアルカロイドの事だと言う事です。わが国では「麻薬及び向精神薬取締法」により禁止されておりますが、一部が医学療法薬として使われております。
南米の高地に行けば「高山病予防にはコカの葉を煎じて飲めば良い」と言われ、食堂はもとより高級ホテルにまでコカの葉を煎じた飲み物が準備されております。まあ、現地ではコカの葉はお茶代わりと言っても過言ではありません。しかし、この葉を煮詰めてアルカロイドを抽出したいわゆるコカインは、白い粉末で神経系を興奮させる作用を有し、高揚感や疲労感の軽減などの作用があるが、過剰に摂取を繰り返すと心疾患や脳損傷になる恐れがあると言われております。まあ、ここまで聞けば摂取は止めた方が良いようですね。
私が南米のペルーを訪ね、クスコやマチュピチュそしてチチカカ湖などを旅した時は、コカ茶のお世話になりました。チベットやネパールの高地で、高山病に罹り苦慮したこともありますが、4000mと同じ標高でも高山病には罹りませんでした。恐らく効いていたんでしょうね。甘く味付けをしてあるホテルもあり、それなりに工夫をして旅人を迎え入れておりましたし、街の至る所でビニールに包まれた葉っぱが売られておりました。現地ガイドからは「国外には持ち出さない様に」とは強く念を押されました。
ペルーはインカ帝国の在った国として知られ、今でもクスコやマチュピチュ、サクサイワマンなどインカ帝国時代の遺跡で外貨を獲得しております。歴史的に見れば1532年11月16日インカ帝国北部から侵入して来たスパイン人フランシスコ・ピサロ率いる180名の軍隊から招待を受けた当時の皇帝アタウアルパは、5000人の従者を従えてカマルハル広場に向かった。友好的な会見の場所には武器を携帯しないと言う伝統が負に働いてしまった。
輿に載った皇帝をカマルハルに幽閉したピサロは、皇帝と黄金財宝との交換の約束を反故にし,翌1533年8月29日に、キリスト教に改宗しないと言う事を理由にアタウアルパを処刑してしまいました。ピサロたちは黄金に輝く神社や宮殿から金銀財宝を略奪し、美術工芸に富んだ作品も溶かし金の延べ棒にして自国に運んだと言われております。その量の多さに、スペインはもとよりヨーロッパ各地で金地金の暴落が有ったとも言われております。その征服者ピサロも10年後には部下に暗殺されているのです。
鉄器やアーチなどと言う文明を持たなかったインカの人々でしたが、石積み技術や人体に脳外科手術を施すなど、驚くべき技術を有していたのです。現地の博物館などには脳手術で頭蓋骨に開けた穴の在る骨が展示されているなど、我々を驚愕させる遺跡も残っております。この外科手術などの折にコカの葉を多量に含ませ、今でいう麻酔に供していたのではないかとの説もあります。おそらくその推理は当たっているでしょう。
インカの人々は鉄の製造やアーチなどと言う技術を知らなかったばかりでなく、文字も持たなかったのですね。しかし、帝国内に張り巡らせた道路(インカ道)に飛脚を走らせ情報交換を行ったと伝えられております。キープと言う紐の結び目で情報を伝達する道具を飛脚に持たせ、帝国の隅々まで情報を伝達していたとの事です。現地で実物を見たことが有りますが、結び目の数や形で情報が伝えられたと見え、どの様な手法なのか知りたいと思ったのですが実現はしませんでした。
この国(ペルー)にはナスカの地上絵など謎を秘める遺跡も残っており、旅行客には興味深い場所でもあります。世界で最も高所にある湖として知られるチチカカ湖なども面白いですね。標高3812mの高地に位置しその大きさも日本の四国地方が入るほどで、人々はトトラと呼ばれる葦を編んで作る浮島に居を構え、その上で生活を送っております。昔はこのトトラを編んで作った小舟(パルサで)漁をしていたとの事ですが、今ではエンジン付きのボートに代わっております。電気はソーラーパネルを利用したもので、何でも日系人のフジモリ大統領の発案との事でした。
などと、今回も秘境の話でしたね。世界には秘境と言われる場所や地域は数えきれなく存在しております。その中でも気になる場所や地域には出かけて来ました。まだまだ行きたいところは有るのですが歳も歳なので、諦めの時期を探しております。それでは今回はこの辺りで失礼します。
令和7年12月4日 毛利